女性医師が輝ける環境づくりとは
小森 万希子教授
外科医と麻酔科医の理想的な関係
勝又健一(以下勝又): 小森先生、本日は宜しくお願い致します。
小森先生(以下先生): 宜しくお願いします。
勝又: こちらの机の置物、とても素敵ですね。
先生: これは副院長になった記念に大切な先輩から頂いた物なの、かわいいでしょ。
勝又: 本当に素敵ですね、こういった贈り物って嬉しいですね。
先生: はい、本当に感謝しています。
勝又: 早速なのですが、小森先生はいくつもある診療科の中から何故、麻酔科を選ばれたのでしょうか?
先生: 実は最初に選んだのは麻酔科ではなく、内科だったんです。
勝又: あ、そうなのですか!?
先生: 卒後すぐに内科に入って、血液内科、呼吸器内科、神経内科、内分泌、代謝、腎臓、消化器、循環器と回ってその後に、代謝が好きだったので代謝内科をやろうかなと思ったんです。でも、内科に戻る前に『救急』とそれから『全身管理』にも興味があったので、ICUを学びたいと思って麻酔科で勉強させてもらったんです。毎日麻酔をかけて全身管理を教わっていたら、もう麻酔をかける方が面白くなってきまして、そのまま麻酔科に居ついてしまいました。
勝又: そうなのですね。
先生: でもやっぱり医師になって最初の教育ってすごく強烈だから、麻酔科に変わって5年ぐらいは、怖い思いをするたびに内科に戻ろうと思っていました(笑)。でもそれ以上に麻酔科の面白さっていうのがありまして、皆さん仰るんですけれどもペインクリニックあり、ICUあり、それで最初は広く浅くだと思っていたんですけど麻酔科って限りなく内科に近くて、広く深く知らないと駄目な部分もあるんですよね。それで手術麻酔は殆どの外科系の先生と関わるじゃないですか。
勝又: そうですね。
先生: 集中治療室は0歳児から100歳以上の人がいますよね。それで、内科も外科も全科と関わるじゃないですか。また、ペインクリニックというのは、整形外科とか皮膚科とかと紹介患者さんの関係で関わることが多くて。精神科も関わりますしね。そうすると全科の先生たちと接する機会があるんです。麻酔科を選ぶと患者さんの主治医になれないとか言われるんですけど、手術の間ずっと患者さんを見てますし、ICUとかペインで担当になることもできて患者さんと接する機会はありますので、ここの考え方は人それぞれですよね。
勝又: 本当にそうですね。そこは人それぞれの考え方で変わってくる所ですね。
先生: この前の日本麻酔学会(日本麻酔科学会 第64回学術集会)で、医学生・臨床研修医向けの招待企画で私も登壇しましたけれども、最後に講演者に色々な質問をされたのですが、その際にも「やっぱり麻酔科は主治医にはなれないんですか?それは寂しくないんですか?」と質問がきたんですね。その質問に対して国立の教授の先生は「ある意味究極の主治医だよ」って。また他の先生は「僕は患者さんと話すのが苦手だから主治医じゃなくって周術期をやりたいんだ」って仰っていまして、色々な考え方があって、様々な面白さがあると思うんですよね。だからこそ麻酔科から足を洗えない…って言ったら変ですけれど、私も麻酔科にどっぷりつかりました(笑)。
週に1日でもいい、”期間”を決めて麻酔科を続けて欲しい
勝又: 最初に麻酔科を何故選ばれたのかという質問をさせて頂きましたが、先生方には比較的お伺いするようにしています。僕たちの仕事柄、キャリアの途中で悩まれている先生が対象なので、「麻酔科に何故なられたのか」一度原点に立ち返ってもらいまして、困難や辛い事を乗り越えて頂きたいと思っています。“原点に立ち返る”結構ここが重要だと思っています。 麻酔科は特に女性の先生が増えてきていますし、先生ご自身も女性ということもありますので、女性ならではの悩みですとか、女性医師のご勤務する際の身のこなし方や処世術、医療機関や行政の問題など、お話できらたらと思っています。まず小森先生は子育てもご経験されていらっしゃって、時間のやりくりなど大変だったかと思うのですが、子育ての両立で辛かった点などございましたか?
先生: 今から思うとただ夢中で辛いとはあまり感じませんでした。特別に変わったことなんかしていませんし、今の若い方達にも言うんですけれど、誰でも乗り切れることなので、そんなに大変って思わないで欲しいですね。先輩方はみな当然のようにやっていらっしゃいましたしね。最初のうちは慣れない事ばかりで大変かもしれないけれど、だんだん育児や家事と仕事の両方ができるようになってきて、日に日に楽になってくるんですよね。子供も成長しますし。ただ大変って思えば、帰りの時間を気にするなどちょっと窮屈な生活でしたけどね(笑)。私はベビーシッターにほとんどお願いしていました。朝早くから時には夜遅くまでいてもらって、毎日の保育園の送り迎え、そして当直の時は泊まってもらいました。自分の給料は全部ベビーシッター代となっていましたが、今から考えますと、一時期のことですし、自分への投資と考えればいいのではないでしょうか。休日の当直は義母に協力してもらいました。主人も相当仕事をしていましたから、周囲の協力あってこその子育てだったように思います。子育てにおいては、どうでしょうね〜、忙しすぎておろそかになった部分もあると思います。そんな忙しい私の姿を見ていたからか息子は「絶対に医者とは結婚しない」と言っていたんですけど、つい先頃、女性医師と結婚しました(笑)。
勝又: そうなんですか!!それはおめでとうございます。背中を見て育っていらっしゃいますね。
先生: 話がそれましたね、ごめんなさい。ご家庭によってはベビーシッターや家政婦のサービスを利用したり、ご両親に協力してもらったりしている方もいますが、それを「自分はこうしてきたから」と後輩に押し付けたら駄目で、本当に千差万別なんですよね、子育てとの両立というのは。10人いたら10人違って、お金でお手伝いさんを雇えることができる人もいるかもしれないけれども、ご主人やご家族の反対にあったり、子どもの身体が弱かったりとか色々な環境があると思います。だから本当に十人十色で、100パーセントの体制を組んで仕事に望みなさいっていうことは言いたくなくて。今はその人に合った生活パターンでやる時代ですしね。ダイバーシティを尊重してフレキシブルに働く、自分の好きなときに働くっていうんですか?何が言いたいかっていうと仕事を途中で中断することなく、どんな形でも続けてもらいたいなって思うんですよね。
勝又: 「仕事を中断する」とか「キャリアを止める」というような言葉って、僕の印象ではゼロかイチで考える人が結構多いなという印象があります。ゼロっていうのはもう子育てしかやらない、一方でイチっていうのは常勤でフルタイムで働くという話なんですけど、医師の場合は非常勤という選択肢もありますし、今はポピュラーになりましたが時短勤務のような働き方もありますので、仕事が続けやすい環境にはなってきているかと思います。理想論を言えば時間が長いに越したことはないのですけど、僕は最低でも週に1日っていう単位の時間を作ることが大事じゃないかなと思っているんです。ですが、その一方でやはり週1日でキャリアを維持するっていうのは難しいとも感じるのですが、教育者の立場から見てどうでしょうか?
先生: うん、そうですね。全く辞めてしまうと医学って日進月歩なので、長期間中断して戻ってくるのは正直難しいと思います。
勝又: なるほど、やはりゼロは厳しい?
先生: そうですね、週1日でもいいと思いますよ。勤務を続けるにあたって私が大事だなと思う事は優先順位です。その場その場で家庭が大事か、遊びが大事か、仕事が大事か、勉強が大事か。日々の臨床と家事・育児に追われて、知的欲求を満たしたい気持ちになるときには勉強や論文を書く時間を捻出すると充実感・達成感が得られることもありますよ。時には息抜きも必要だと思うので、子供を誰かに頼んで美味しいものを食べに行ってもいいし。
勝又: そこは仕事とのバランスですよね。
先生: そうです、だからその場その場で優先順位を決めることが大事だなと思います。そうすると、ここは手を抜いても良いっていうところは絶対にあるわけですから。
勝又: ありますね、全部完璧にやってたら医師じゃなくても、もたないですよ。
先生: あとは眠る時間とかね。就寝時間は12時過ぎると明日はしんどいから…12時までにできる事をやろうとか。いかなる場合も優先順位を決めるっていうのは大事。完璧主義を目指すと絶対ダメです。完璧主義はやめなさい(笑)。
勝又: それで言うと『イイ加減』って言葉好きなんですよ。『いい加減』っていう表現だとちゃらんぽらんな感じになるんですけど、『良い加減』っていうと適度なバランスで…みたいないい表現になるじゃないですか。
女性医師の処世術 マネジメントする側の考え方
勝又: 少し話を戻しまして、先ほど仕事を続ける事が大事というお話がありましたが。
先生: そうですね、週1回でもいいので続けて頂きたいとは思います。例えば子供さんがまだ小さいとかなら実母や義理のお母さんに週1日だけお願いするとかだけでもいいし、ご家庭の事情で色々な働き方があっていいと思います。逆に管理する側としては、その人が「どのぐらいできるか」を伝えてくれると助かるんですよ。例えば、私は朝早く来れるけど17時には帰りたいとか、週3日なら来れるよとか、平日の当直はできないけど土日は出来る、とかね。
勝又: できる範囲でやってもらえればいいっていうことですよね。
先生: ただそれは“期限”を決めないと駄目ですね。例えば妊娠したって上司に伝えたら、その瞬間から「当直はやらなくていいよ、5時に帰っていいよ」などと言ってもらえる職場があるみたいですが、実は言われている側はもうちょっとできるのになとか、やりたいのになとか感じている場合もあると思うんですよね。
勝又: なるほど
先生: だから、自分のできる事を自ら言ってもらえたらと思います。ただし先ほども申し上げましたが“期限付き”ですよ。
勝又: 人によって許容範囲は違うので、自分の中で「ここまではやれるよ」とアピールすることはすごく大事っていうことですね。
先生: そうです。そうするとできないことはもちろんできないわけだから、できる範囲でやってもらって、例えば2年は当直なしだけどその後はやってねって。 学会とかも3日、4日ありますよね。そのうち1日は留守番をするとか、他にも連休とかお正月とかクリスマスとか、医局のみんながやりたくない日に日直だけでもするとか。まぁ1月1日にとは言わないけれども、そういうところで誠意を見せるって事がすごく大事で、それは「やりなさい」って言うのではなくてそういう風にやっていくとみんなの信頼も得られるし、いざという時に医局員に甘える事もできると思うんです。言わばお金の貸し借りと同じですよね。
勝又: ある意味お互い様ですからね。
先生: そうです、お互い様です。
勝又: 日常的に早くあがらせてもらってたりするわけですからね。
先生: で、その気持ちを形として返していけば、すごく人間関係がうまくいくと思うんですね。
勝又: そうですね。
先生: 面白いお話があるんですが、『イクボスアワード』というイベントがあって、ノミネートされたある会社には200通りの勤務体系のオプションがあるんですね。例えば何時から何時までって細かい給与体系で分かれているんですけれど、その会社がいろんなことをやって、いろんな風に働かせてるけど、最終的には「人間性だ」って言うんですよ。
勝又: そうですね。
先生: 嫌な人のためには誰も働かないですしね、制限されながらも誠意を見せて一生懸命働いている姿を見たら、誰だって手を貸したくなりますよね。
勝又: むしろ、人が嫌がることを積極的にやって「いつも先生にはお世話になってるからね」を言わせたもの勝ちですかね?そこらへんはやっぱりバランスなのでしょうか。
先生: あと、麻酔科は外科医との信頼が一番大事だと思っていまして、この仕事を続ける上で何が一番大事か後輩に伝えるとするのであれば、“外科医との信頼関係を得てほしい”ということです。それさえ得られれば、後はどんなに休んだり穴をあけたりしても、戻った時に「あの先生はあの時一生懸命麻酔をやってくれたから…」って言われると思うのですよね。やはりきちんとチームとして手術に参加する…寝ていたりとか、スマートフォンばかり触っていたりとかそういうことは絶対ダメで、とにかく手術に一生懸命に参加して、麻酔科ができることをやる。外科医との信頼関係を築くことですね。
勝又: 今の話での秘訣みたいなもので言うと…
先生: やっぱり一生懸命やることですね。一生懸命で思い出して話がちょっとそれちゃったんですけど。
勝又: でも大事なメッセージだと思います。
先生: 外科医がやりやすいように、筋弛緩をもっと利かしたほうがいいですか?とか気を使ってるふりじゃなくて本当に気を使ってやることで、外科医も和むでしょうしね。
勝又: 女性男性に限らずですが、多種多様なご時世なので、家庭の問題とかある中でもいかに誠意と責任感を持って仕事に取りかかれるかということが、やはり重要なポイントになってきますよね。
女性麻酔科医のキャリア 時短勤務の弊害
勝又: 話は変わりますが、最近様々な立場の先生方と『麻酔科の未来』についてお話をしているのですが、周術期のシステムが変わりつつあるとか、麻酔看護師の話とか色々な話がありますよね。そうすると、いわゆる麻酔を安全にかけて覚ますのは当たり前のスキルですけれど、そこにプラスアルファがないと麻酔科医の存在感がなくなっちゃうんじゃないかなって個人的に思うんですよね。
先生: なくなりますよ。ロボットで良いんですから、麻酔をかけるのは。
勝又: そうなると、麻酔科医として必要なスキルとか、見ておくべき方向感というのは、先ほどの外科医との信頼関係とかそういうのもあるのですが、技術的な部分とか日常業務の部分でいうと、どんなことが大切になってくるのでしょう?
先生: やっぱりそれは、きちんと細かいことに気を使って麻酔を行うってことが大事なんじゃないかなと思います。患者さんが冷えてないかしらって触って、さり気なく何か掛けてあげるとか、こんな無理な姿勢になってたら後々痛いんじゃないかしらとか、サチュレーションがこの指のままだとかわいそうかなとか思うと指をつけ替えたりしていますけど、そういった些細な心遣いかなと思います。ロボットがもし麻酔をかけたとしたら、外科医はロボットにお礼は言わないですよね。でも麻酔科医がかけて、色々なことを総合的に評価しながら、その人が寝てる間も快適に、麻酔が覚めた後も痛くならないようにとか苦しくならにようにバランス感覚をもって行う、そういうことができるのが麻酔科医、人間の強みですかね。実はそういう文章を前に書いたことがあって、これからはロボットが麻酔をかける時代だ、というテーマでですね。これを麻酔科専門医が制御して行わなければならない時代がくることも想像されますね。麻酔科の仕事は今後益々複雑化し、極めて重要な医療機関として発展すると思います。ですから、麻酔科に属するものとして、その心構えをしっかりもって、麻酔の真髄を分かって、きちんとした管理をすれば、外科医の信頼を得られると思います。
勝又: 今まで麻酔科の先生方とお話してきて表現の仕方は色々ありましたけど、そのようなお話をされる先生はたくさんいらっしゃいました。「実はこれから麻酔科医っていらなくなると思う。俺まだ40歳だけどこの先大丈夫かな?」という話をされる方もいて…。そんなことはないと思うのですが。一方で病院側から聞く話としては外科医と上手くやって欲しいということをよく話してますね。
先生: 本当にそう思います。
勝又: あと非常勤の先生は、よほど悪意や失態がない限りはクレームを言われないですが、常勤になるとどちらかというと、人柄が重視されますよね。
先生: そうですよね、その人にかけてもらったらリラックスできる、という点においてでしょうね。
勝又: スキルやキャリアというところより、気持ちよく施術できるという点ですよね。
先生: やっぱり最終的には“人間性”が必要ですよね。先ほどの話ではないですけどロボットが麻酔をかけるのではないので。人間教育も大事ですよね。大きく外れないように、私たち指導者の立場ができることは「こうしたら良いよ」と教えるところまでですよね。人間性は経験とともに培われて行くものでしょうし。
勝又: そうですよね。また、もちろん人間性もですが、麻酔技術も大切ですよね。
先生: そうですね、麻酔技術はもちろん大切です。子育て・介護のために時短勤務を行っている人は、長時間オペができない、緊急対応もできない。そういった経験をしていかないと、臨機応変な対応ができない麻酔科医になってしまいます。ですので、先に申し上げました通り、時短勤務もしっかりと期間を定めた期限付きで行ってもらいたいと思います。
勝又: 時短勤務をずっとやってしまうと、そういう症例の経験値が減ってしまうことになりますね。
先生: 緊急対応ができなくて、長時間のオペ管理が上手くできないというのは、偏った麻酔科医になってしまいますね。
勝又: やはり時短勤務などの制限がつく先生だと、ハイリスク症例の経験が少なくなってしまうし、フリーランスの先生もそうですけども、外勤の先生にあまり難しい症例を、というのはよほどベテランの先生でなければなかなか頼みませんよね。これと同じように、若くして医局を出てしまった先生たちに対してもそういった不安がありますね。
先生: ある一定の時期までは仕方がないですが、その勤務をし続けてしまうのは問題があると思います。
勝又: その勤務にどっぷり浸かってそれが楽だと感じてしまうと、その勤務から抜け出せなくなってしまいますよね。
先生: そうですね、大事なのは“自分が将来的にどんな麻酔科医になりたいかをイメージして働く”というところです。誰だって緊急対応が出来ない麻酔科医になりたくないでしょう。外科医に信頼されたり、自分で夜間の緊急をこなしたりというのは自分の実力が出る部分であって、麻酔科の醍醐味ですよね。それが家庭の事情、例えば介護や子育てで強いられてしまうのであれば、周りに頼って甘えていいこともあると思います。
東医療センターの麻酔科医局の特徴
勝又: 実際に、小森先生の医局ではどのような配慮をされていらっしゃいますか?また、東京女子医科大学ならではの強みなどをお聞かせいただけますでしょうか?
先生: 勤務に関する先生の要望・意見を汲んでいる、というところです。これまでも遅くまでは勤務できないけど週1回は当直はできるとか、休日の日直はできるなどフルタイムでできない方々を温かく迎え入れています。さらに病院内に保育園があるということ、2歳まではその保育園を利用できます。私はその保育園の設立にも携わりました。それに加え、時短勤務の制度もあります。また、医局員は理解があって皆優しいです。全員仲良しという奇跡的な状態であり、本当に自慢の医局員です。人の仕事も喜んで代わります。他人のことを自分のことのように考えられる人が多いと感じていますね。
勝又: 以前、忙しかった時期があったと聞いていますが…。
先生: あのときは本当に助かりました。
勝又: いえ、あのときはそんな大層なお手伝いできなかったじゃないですか。
先生: いやいや、あなた方のような人達がいると安心できるんですよ。あと、例えば先日(日本麻酔科学会第64回学術集会)の招待企画で、ある男性が講演されている中で「自分は子供が5人いて、育休を取った」と話していましたが、そうやって男性が気持ちよく育休を取るにはある程度マンパワーが必要なんです。そういった場合に休みを取れるよう、誰かを紹介していただくというのはとても有り難いことです。外部から来た方も他の医局を見るのに興味があるでしょうし、その日だけだと思ってもしっかり案内しています。またそこから新しい人脈ができますからね。
勝又: そうですね。
先生: ここの売りは小規模なので、外科とも顔を合わせてよく話ができますし、治験を頼んだときも皆さん非常に協力的なんです。規模がちょうどいいんですよね。自慢の医局員なので、どの科からも慕われていて、外科医との関係も良好です。また、今は非常勤ですが専門医を取得するまで私たちでお預かりしていた先生がいて、その方が「この医局ぐらい自分の希望が通るところはないよ」と、とてもうれしいことを言ってくださったんです。私としては結構締め付けているつもりだったんですけども…。夏休みを取るにしても大きな組織だと1週間単位で取らなくてはいけない。私たちは休みたい時に休みを取れるようにしています。非常にフレキシブルな医局だと思います。医局もそうですが、研究を行うにしても「こういう臨床研究をしたい」と言えばどの科も協力してくれます。そのために必要な研究材料もたくさんあります。十数人という少ない医局員ですが、国際学会でも常に医局員に発表させていますし、科研費も4人獲得しています。大きな医局になると、研修をやるにしてもどうしても教授と研修医の間に距離ができてしまうんですが、私たちはマンツーマンで教育でき、研修医の成長がしっかりと目に見えるんです。学会発表するときも、論文作成から発表するまで全ての要素でサポートができます。そうやって指導される側はステップを踏んだ成長ができますし、指導者側も成長が目にみえます。なので、若い医局員が当直の独り立ちをするまでがとても早いんですよね。心臓麻酔も入局してその年の夏前くらいから行います。しっかりと指導者と一緒に行います。以上が私たち医局の売りでしょうか。
勝又: 小規模の医局だからこその良さってありますもんね。
先生: まだまだ理想の医局とはいえないでしょうけど、医局員からやりがいがあるとか楽しいとかっていうのを聞くとちょっとホッとしますね。
勝又: ええ、そうですよね。
先生: 全員が言うわけじゃないですけど。忙しすぎて余裕がなくなったり、疲れがたまったり、うまくいかなくて落ち込んだりする場面もありますが、お互い助け合って、前向きにやっていますね。
勝又: 後ろ向きがいないと、それだけでも雰囲気違いますもんね。
先生: そうです。誰が来てもフランクで割とウェルカムなところも強みでしょうね。
勝又: また、小森先生のような子育てなどを実際にご経験されてきた方が上にいらっしゃるという強みもありますよね。多くの女性の麻酔科医や、育児・家事・介護等を両立されている男性医師や女性医師の希望のような存在だと思います。本日はお忙しい中、貴重なお時間を本当にありがとうございました。
先生: こちらこそ有難うございました。